活動記事:イベント報告
TICAD9テーマ別イベント
「気候に対して強靭で脱炭素なアフリカに向けた
日・アフリカパートナーシップ」ⅰ
イベント名 | 「気候に対して強靭で脱炭素なアフリカに向けた日・アフリカパートナーシップ」 |
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開催日 | 2025年8月20日 15時半~17時 |
開催方法 | TICAD9会場(パシフィコ横浜 アネックスホール) |
概要 |
気候に対して強靭で脱炭素なアフリカに向けて、日本とアフリカの気候変動対策(緩和・適応含む)に関するパートナーシップの促進を目的としたセミナーが、TICAD9のサイドイベントとして環境省主催で開催されました。 |
関連資料 | https://www.env.go.jp/press/press_00444.html |
イベントの様子ⅱ
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オンラインで基調講演を行った滋賀県知事 |
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国際熱帯木材機関(ITTO)貿易・産業部長の講演 |
基調講演
滋賀県の三日月大造知事より、環境と経済の調和に向けた連携の重要性についての講演がありました。1960年代の急激な工業化・都市化により、琵琶湖は1970年代後半に赤潮などの水質汚濁が進展したが、合成洗剤に含まれるリンが原因物質であることを突き止め、合成洗剤を使わない「石けん運動」および「琵琶湖条例」の制定により、産業と環境の両立を進めてきたことが紹介されました。気候変動等の影響により湖沼環境は変化し続けており、琵琶湖は世界の湖沼の課題を垣間みる窓として捉えることができる、そしてグローバルに共感・連携・実践を深めて、具体的な行動を起こすときであることが強調されました。また、世界と結びつきを強めていく上でアフリカ大陸は重要であることが述べられ、アフリカの発展に貢献する滋賀県の企業についての紹介がありました。
国際熱帯木材機関(ITTO)のモハメド・ヌルディン・イドゥリス 貿易・産業部長からは、アフリカの脱炭素化を推進する上での国際協力について紹介がありました。森林は地球の陸地面積の31%を覆っている一方で、2015年から2020年の間で約1000万ヘクタール(韓国などと同等の規模)の森林が失われたと推定されていると述べられました。アフリカでは、経済成長を支えつつ炭素排出量を削減する必要があることから、再生可能エネルギーへの多額の投資ニーズを有するとともに、土地利用の変化と農業の拡大が排出量の主な要因であることによる農業と土地管理への革新的なアプローチの必要性を強調しました。
SOI(Statement of Intent)署名式
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SOI署名式。環境省 土居健太郎 地球環境審議官と、 |
環境省とアフリカ開発銀行(AfDB)間の環境保全分野等における協力に関する覚書の署名が行われました。覚書では、環境保全や汚染防止、自然保護等の分野における両者の協力関係を構築していく意図を確認しています。具体的な協力分野として、二国間クレジット制度(JCM)を含めた気候変動対策の取組、適応・ロス&ダメージ分野、廃棄物管理による公衆衛生の改善について、今後連携を深めていく方針が確認されました。環境省 土居健太郎 地球環境審議官からは、日本が引き続きアフリカから信頼されるパートナーとして、日本企業の力も結集しながら、気候変動と他の課題を同時に解決するシナジー型のアプローチを通じて、持続可能な発展に貢献していくことが表明されました。
アフリカにおける適応の推進
3名のパネリストを迎えて、アフリカにおける気候変動適応の推進に関する議論が行われました。ダバ・デベレ・フンデ 駐日エチオピア大使からは、エチオピアが気候変動の影響の緩和を目的にグリーン・レガシー・イニシアティブという植樹活動を進めており、4年間で200億本の苗木植樹、120の育苗組織の整備、2,000万人以上の市民参加が達成されたことが紹介されました。食糧の安全保障や土地の浸食防止、水の管理、農業の生産性改善など様々なものに貢献し、経済の発展や雇用の創出にも寄与していることが説明されました。キーコーヒー株式会社 柴田裕 代表取締役社長は、アフリカ産のコーヒーは日本において非常に人気があるものの、気候変動の影響によりアラビカコーヒーの生産地が2050年に半減するといわれていることに触れ、このような状況の中で、エチオピアでの気候変動適応策として現地の生産者の状況を調査し、生物多様性保全とコーヒーの栽培が共存できる環境を提供していることを説明しました。また、アフリカのコーヒーの魅力を推奨することにより、アフリカとの連携を醸成していきたいとの意向が発信されました。ケビン・カリウキ アフリカ開発銀行副総裁からは、AfDBは資金の63%を気候変動適応策に充てており、この数字は多国間開発銀行の中で最も大きな数字であることや、TICAD 9における連携の深化により、適応資金の規模拡大の機会を期待していることが述べられました。日本からアフリカへの投資機会に関するAfDBの役割は、アフリカにおけるプロジェクトに民間セクターが参画できる環境を創出することであり、再生可能エネルギーや環境インフラ技術などを誘致できる仕組みを構築し、日本企業と対話し、導入ステージへ進める支援を行いたい旨が表明されました。
アフリカの脱炭素に向けた協力
国際連合工業開発機関 (UNIDO)の安永裕幸事務次長より、アフリカのJCMパートナー国でのUNIDO-JCMに関する紹介が行われました。アフリカのJCMパートナー国5カ国(エチオピア、ケニア、セネガル、チュニジア、タンザニア)におけるJCMプロジェクトの実施件数が、アジアのJCMパートナー国と比較すると依然として限定されていることが挙げられ、UNIDO-JCMではUNIDOのアフリカにおける強力な地域ネットワークと無償資金協力の実行能力を活用することで、JCMプロジェクトの早期形成と実施を促進することが期待されていると説明されました。続いて、UNIDOの助成金による準好気性埋立構造を採用した廃棄物処理技術「福岡方式」を用いた世界初の炭素クレジットプロジェクトとして、チュニジアにおけるUNIDO-JCMの事例のほか、生鮮食品用施設に自然冷媒と太陽光発電を用いた省エネ冷蔵システムを導入したセネガルの事例、大規模なバラ農園に太陽光発電と蓄電池を導入したケニアの事例が紹介されました。
最後に、アフリカのJCMパートナー国の脱炭素化に向けて、より多くのUNIDO-JCMプロジェクトが採択されることに期待している旨が述べられました。
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UNIDO-JCMに関する紹介 |
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熱心に聴講する参加者 |
本セミナーは、アフリカ諸国、日本の地方自治体、大手企業、そして国際機関などから日本とアフリカの協力の現状や今後の展開についての情報や知見の共有がなされ、気候変動対策に関する各ステークホルダー間でのパートナーシップの構築や強化を後押しする重要なイベントとなりました。また、日本の環境省とアフリカ開発銀行の間で、環境保全分野等の協力覚書の署名が多くの参加者の前で行われる貴重な機会にもなりました。
ⅰ 冒頭写真:パネルディスカッション「アフリカにおける適応の推進」
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