活動記事:イベント報告
ウズベキスタンJCMセミナー
‐JCMプロジェクトの具体的形成に向けて‐
イベント名 | ウズベキスタンJCMセミナー |
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開催日 | 2025年2月27日 |
開催方法 | ウズベキスタン タシケント市 インターナショナルホテル・タシケント |
主催等 | ウズベキスタン国経済財務省(グリーン・エコノミー・プロジェクト・センター)、日本国環境省、日本国経済産業省、海外環境協力センター(OECC:JPRSI事務局) |
概要 |
本セミナーはウズベキスタンにおける二国間クレジット制度(JCM)の普及、及びJCM事業形成の推進を目的とし、ウズベキスタン政府より同国の脱炭素目標やJCMへの期待、ポテンシャル分野の紹介、日本国経済産業省及び関係機関からJCMの基本概要や優良事例、資金スキーム等の紹介が行われた。 現地会場では150名ほど、オンラインからは60名ほどの参加があった。 |
関連資料 |
イベントの様子ⅰ
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ウズベキスタン要人からの説明 |
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セッションに聞き入る参加者 |
セミナー開会の挨拶・ウズベキスタンの脱炭素政策等の説明
ウズベキスタン国経済財務省副大臣、在ウズベキスタン日本国大使館大使から、それぞれ本セミナー開会挨拶がなされたあと、2つの政策テーマが政府担当者から発表されました。
①『ウズベキスタンの脱炭素化政策とJCMプロジェクト開発分野』
ウズベキスタン国経済財務省グリーン・エコノミー推進部
発表概要:ウズベキスタンのグリーン・エコノミーへの移行戦略、グリーン・エコノミー移行のための制度改善・関連組織の設置、JCMとも関連する、自主的炭素取引プロジェクトの主な指標・規則等について紹介されました。また、これら施策の前提として、京都議定書概要・パリ協定概要・ウズベキスタンの主要セクターの温室効果ガス排出量の比率等についての説明もありました。
②『ウズベキスタンにおける自主炭素市場の枠組みで実施される事業・プロジェクト』
ウズベキスタン国グリーン・エコノミー・プロジェクト・センター
発表概要:ウズベキスタンにおける自主炭素市場の枠組み、自主炭素市場が受け⼊れ可能なプロジェクトの種類(再生可能エネルギー、植林プロジェクト、低炭素プロジェクト、節水プロジェクト等)について紹介されました。さらに、これらの事業・プロジェクトの評価基準、自主炭素市場のための事業・プロジェクト形成手順等の説明もありました。
JCMの概要・プロジェクト開発の流れ・FS調査及び資金支援事業の事例紹介
下記3つのテーマについて紹介がありました。
①『JCMの基本概要と最新動向』
日本国経済産業省地球環境対策室
発表概要:JCMの基本概念、JCMのメリット例、現在のJCMパートナー国(28ヶ国)、JCMのスキーム、JCMプロジェクトサイクル、日本のNDC、JCMの拡大に関する今後の方針等について紹介されました。さらに、日本政府によるJCMパートナー国への支援、経済産業省が実施する実現可能性調査及び実証前調査、民間JCM、JCMクレジットの用途、JCMクレジットの発行及び管理に関する事務を行う実施機関の指定等についての説明もなされました。
②『JCM設備事業とJCM Global Match』
公益財団法人 地球環境センター(GEC)
発表概要:JCMプロジェクトの資金調達プログラムとその事例に関する説明がありました。事例として、“廃棄物発電プロジェクト”、“ミニ水力発電プロジェクト”、“バイオガス発電プロジェクト”が紹介されました。JCMプロジェクトの資金調達要件として、そのコスト効果、対象費用として設備・工事・調査・管理作業が挙げられ、既存設備の撤去・土地取得に関する費用は、非対象費用となることの説明もありました。さらに、JCMのGlobal Matchの詳細は公式サイトで確認可能なこと等の説明もありました。
③『JCM事業形成におけるポイント』
一般社団法人 海外環境協力センター(OECC)
発表概要:ウズベキスタンは、再生可能エネルギーの割合の25%増加を目指しており、太陽光、風力、熱ポンプ、エネルギー効率のプロジェクトが他国から提案されています。日本国環境省も、多くの国でGHG排出量の具体的数値削減を示しつつプロジェクトを実施していることが説明されました。ウズベキスタンの現地パートナーへの提案として、ビジネスの収益性向上とGHG排出削減の両立が重要であり、具体的にはアモルファス変圧器の導入が電力損失の削減に寄与し、競争力を高めた事例等が紹介されました。
ウズベキスタンでのJCMに関するポテンシャルプロジェクト等の紹介
ウズベキスタンでのJCMに関する潜在的なプロジェクトとJCM事業形成に係わる制度等について、次の4つのテーマ(地域熱供給事業などの自社技術も含む)で発表されました。
①『農業革新が拓く太陽との共生』
ファームドゥグループ
発表概要:事業内容・ソーラーファームの概要・海外事業概要等が説明されました。ウズベキスタンにおけるビジネスの計画(50kWのソーラーファームパイロットプロジェクトを共同で開発、ラズベリー農園の上にソーラーパネルを設置した実証事例(下記スライド参照)も紹介され、ウズベキスタン国は太陽光発電に適した環境であることが補足されました。
ラズベリー農園の上のソーラーパネルの設置
②『ウズベキスタン国における双日の活動と令和6年度JCM-FSの報告』
双日株式会社 エネルギー・ヘルスケア本部
発表概要:双日がウズベキスタン国で進めている高効率ガス火力発電IPP事業、 大型風力事業について紹介がありました。火力発電IPP事業は現在建設中で、ウズベキスタンにおける発電需要の約10%に相当する電力供給能力を持ち、エネルギー効率の改善・CO2削減に貢献しているとのことでした。風力発電事業では、昨年ウズベキスタン国エネルギー省と基本合意書締結したとの報告がありました。風力発電事業においては、日本政府からのサポートを得て、JCM活用検討を目的としたFS調査が実施され、ウズベキスタン政府が目指すカーボンニュートラルの理解が促進され、JCMプロジェクト化に必要なドラフト書類等が作成されました。
③『二国間クレジット制度日本基金(JFJCM)の紹介』
アジア開発銀行(ADB)
発表概要: 2014年にADBの信託基金として設立されたJFJCMの概要説明と、JFJCMの支援対象国・対象案件・対象技術について説明がありました。JFJCMは、ADBが支援するプロジェクトに先進的な低炭素技術の導入を促進するためにグラント(助成金等)を提供し、支援を受けたプロジェクトはJCM制度に基づいてプロジェクト登録・クレジットを発行し、ソブリン(政府保証付き)・ノンソブリン案件、いずれも支援可能とのことでした。JFJCMの対象国はADBの支援対象国18ヶ国(2025年1月現在)で、対象技術は先進的な低炭素技術導入を伴う案件(エネルギー起源CO2削減含む)であり、技術優位性を示す運転実績を有する旨、説明がされました。
④『地域熱供給事業におけるヒートポンプ活用事例』
一般財団法人 ヒートポンプ・蓄熱センター
発表概要:財団の国際活動(IEAのヒートポンプおよび蓄熱の技術協力プログラム、8カ国のアジア・ヒートポンプ・ネットワークへの参加)と、ヒートポンプが大気熱等再生可能エネルギーを利用した脱炭素化のカギとなる技術であることについて、紹介されました。ヒートポンプは‐100℃から100℃を超える熱を発生させ、冷凍、冷蔵、空調、給湯、乾燥など幅広い分野に適用できること、また容量は大小あり、住宅用から産業用まで多くの部門に適用可能な旨、説明がありました。さらに、地域熱供給は未利用エネルギーを活用し、地域の冷暖房用エネルギーを製造して複数建物に供給することで、地域でのCO2削減が期待される技術であることも説明されました。
セミナー閉会後にはネットワーキングランチやビジネスマッチングの時間が設けられ、活発な交流があり、関心の高さが伺えました。参加者からは「ウズベキスタンにおけるJCM展開の可能性にビジネスチャンスがあると考える」「JCMを活用する意義を見出すことができた」など、期待の声が聞かれました。JCMの周知が進んでいない現地において、多くの企業の方々に向けて情報提供ができ、JCMについて理解促進が図れました。
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