活動記事:セミナーレポート
2025年度 第4回JPRSIセミナー
「気候変動に伴う損失と損害の対応のあり方
~民間参画促進に向けて~」

| イベント名 | 2025年度 第4回JPRSIセミナー 「気候変動に伴う損失と損害の対応のあり方 ~民間参画促進に向けて~」 |
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| 開催日 | 2026年1月20日 15時~16時30分 |
| 開催方法 | オンライン |
| 概要 | 気候変動の進行に伴う甚大な災害が頻発する中、開発途上国や小島嶼国等における損失と損害の回避・最小化・対処が喫緊の課題となっており、国際的な関心が高まっています。本セミナーでは、損失と損害をめぐる国際的な議論や支援の枠組の解説を通じ、損失と損害対応への具体的な関わり方を検討する機会を提供しました。 プログラムについては、下記「セミナーの記録」ページをご覧ください。 |
| セミナーの記録 | https://jprsi.go.jp/ja/static/activity-archive/2025/r7_seminar4_report |
イベントの様子ⅰ
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環境省による損失と損害対応の取組解説 |
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日本企業の取組を紹介 |
開会挨拶
環境省 羽井佐気候変動科学・適応室長より開会挨拶が行われ、後発開発途上国や小島嶼国等において、気候変動に伴う損失と損害の回避・最小化・対処が喫緊の課題となっていることが述べられました。日本政府は国際的な支援枠組の整備を進めており、日本がこれまで多くの自然災害を乗り越えてきた経験を海外展開することで、世界の損失と損害対応に貢献していく方針であること、また、それにあたり日本企業の参画を推進したいと考えていることが説明されました。
損失と損害の概要並びにこれまでの国際的な貢献
環境省 松田気候変動科学・適応室室長補佐より、パリ協定に基づく損失と損害対応の国際的な流れ・枠組について、及び日本政府によるこれまでの国際的な貢献について、解説が行われました。
国際的な枠組としては、ワルシャワ国際メカニズム(WIM)、サンティアゴ・ネットワーク(SN)、ロス&ダメージに対応するための基金(FRLD)という3つの柱が整備されていること、パリ協定8条4項によって協力及び促進の分野が規定されていることが説明されました。
日本政府は、COP27において「日本政府の気候変動の悪影響に伴う損失及び損害(ロス&ダメージ)支援パッケージⅱ」を公表しており、そのメニューの一つとして、環境省は「アジア太平洋地域における官民連携による早期警戒システム(EWS)導入促進イニシアティブ」及びこれに基づく「EWS官民連携協議会ⅲ」を立ち上げています。同協議会の取組として、現在はASEAN諸国を対象に、日本企業が有する優れたEWS関連サービスの展開が進められていることが紹介されました。
あわせて、環境省が各国と締結している環境協力の覚書(MOC)に基づく取組の例として、フィリピンにおいてはASEAN向けの損失と損害に関するプロジェクト提案の策定を進めていることが紹介されましたⅳ。
損失と損害対応のための技術支援や基金について
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 環境・自然ユニット 矢野主席研究員より、損失と損害に関する国際的な3つの柱である、ワルシャワ国際メカニズム(WIM)、サンティアゴ・ネットワーク(SN)、ロス&ダメージに対応するための基金(FRLD)についての詳細な解説が行われました。
そのうえで、損失と損害が民間企業の活動にどのように影響するかが説明されました。民間企業は、気候変動が経営に及ぼす影響・リスクへの対応を求められていますが、同時に損失と損害への解決策の提供は事業機会の獲得にもつながります。民間企業への期待として、まず途上国にニーズが存在することを把握し、自社サービスのビジネス化の可能性を精査すること、そのうえで途上国の支援要請とのマッチングを通じて事業を形成し、さらには取組の対外発信によってナレッジ共有に貢献することが挙げられました。
民間ビジネスの事例(企業の取り組み)
損失と損害に関係する事業を実施している民間企業より、取組が紹介されました。
東京海上ホールディングス株式会社
アンダーライティング企画部 竹内マネージャーより、保険業界及び東京海上グループの取組が発表されました。経済損失と保険補償の差を指す「プロテクションギャップ」は、気候変動に伴う災害に起因するものが顕著になっており、プロテクションギャップの要因を分析したうえで対策を講じる必要があるとの認識が示されました。プロテクションギャップの縮小に向け、保険業界では官民連携による保険制度が各国・地域で構築されていること、東京海上グループでは保険領域にとどまらずソリューション事業を積極的に展開していること等が紹介されました。
株式会社パスコ
橘上席執行役員より、災害リスクレポート及び災害緊急撮影の取組が発表されました。気候変動に伴う災害が多発する中、事業継続計画(BCP)を策定する企業が増加しており、また気候関連財務情報開示タスクフォース(TCDF)開示の一環として自社リスクの把握が求められるようになっています。株式会社パスコでは、企業の位置情報等に基づく災害リスク及び対策に関して専門的知見を提供するサービスとして、災害リスクレポート事業を実施していることが紹介されました。また、災害時の緊急撮影については、人工衛星、航空機等の様々なプラットフォームを活用して実施し、被災地支援に貢献していることが説明されました。
積水化学工業株式会社
ESG経営推進部 三浦環境経営グループ長より、気候変動による損失と損害リスクをチャンスに転換するために積水化学工業株式会社が行ってきた分析手法が紹介されました。同社では、TCFDや自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のフレームワークを用いて自社経営のリスク分析を行った結果、自社における製品開発を通じてリスク低減を図れること、さらにこのリスク低減策を事業化することで新たなサービス展開が可能となることを見出しました。同社が有する住・社会インフラからケミカルソリューションまでの幅広い事業領域を活用し、イノベーションを創出することで、社会の安全に貢献していくビジョンが示されました。
質疑応答
各企業の取組や業界の状況について、活発な質疑応答が行われました。
日本企業が途上国で事業展開する際の工夫・注意点については、現地のデータ不足や災害トレンドの変化に対応するために新技術導入や研究投資を進めていくべきであること、現地の人材教育を合わせて実施していること、相手国の法規制を把握すべきであること、などがあげられました。
損失と損害は比較的新しい概念であり、日本企業の貢献の場も手探りの部分が多いと言えますが、各企業がそれぞれの立場で工夫を重ねながら先行事例を開拓している姿が示されました。
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