気候技術センター・ネットワーク(CTCN)
地球規模の気候変動問題に対処するためには、技術の活用が重要です。温室効果ガス(GHG)の排出削減に寄与する技術、気候変動の影響に適応する技術が必要となりますが、それらの技術は主に日本を含む先進国が有しています。そのため、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)では、気候変動対策技術の途上国への移転、また技術の研究開発促進を重視し、技術メカニズムを構築しています。その一つが、CTCN(気候技術センター・ネットワーク:Climate Technology Centre and Network)です。
≫ CTCNウェブサイトはコチラ 。
CTCNの概要
CTCNでは、UNFCCCの技術メカニズムとして、途上国における気候変動対策技術の開発及び普及の促進、そのための法・政策・技術ロードマップの整備や能力開発支援などの技術支援(Technical Assistance:TA)案件を実施します。CTCNのTA案件は、登録されたネットワーク機関が実施することとされています。
そのほかに、気候変動対策技術に関する知識の共有や能力開発、協働体制・ネットワークの構築など(例えば、地域フォーラム)も行われます。
- CTCNのTA案件一覧は、CTCNウェブサイトの「Technical Assistance」ページに掲載されています。CTCNの技術支援(TA)案件を実施する登録ネットワーク機関は、世界全体で803機関が登録されています(2023年6月時点)。詳しくはCTCNウェブサイトの「Network Members」ページをご参照ください。
- CTCNのTA案件実施前に、対象TA案件に対する関心表明を求めるページ(「Engage with Network: Current opportunities for TA」ページ)が設置されました。TA実施予定案件一覧として、確認できます。
日本の登録ネットワーク機関(2023年5月時点)
- (公財)地球環境センター(GEC)
- デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
- 日本工営ラテンアメリカ・カリビアン
- (一財)日本環境衛生センター
- (公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)
- (一社)海外環境協力センター(OECC)
- (国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
- (公財)地球環境戦略研究機関(IGES)
- EY新日本有限責任監査法人
- CTCNのネットワーク機関の登録は、随時受け付けています。申請書をCTCNに送れば登録可能です。詳細については、CTCNウェブサイトの「Network」ページ("Join the Network"の項)をご参照ください。
CTCN活用等に関するお問合せ先
環境省では、CTCN技術支援案件の形成支援を行っております。(令和5年度委託先:(公財)地球環境センター(GEC))
GECのウェブサイト もご参照ください。
- 環境省地球環境局国際脱炭素移行推進・環境インフラ参事官室(E-mail:chikyu_kokusai@env.go.jp)
- (公財)地球環境センター(GEC)(E-mail:gcf-ctcn@gec.jp)
想定される成功例
CTCNを活用した技術支援(TA)(1件当たりの予算は最大25万USドル)では、気候変動対策技術の途上国への導入促進が支援されます。途上国に技術を導入・展開するための環境整備を進めるための支援と考えられます。
したがって、CTCN TAプロジェクトを起点として、下図に示すように技術の普及展開につなげていくことが考えられます。
- 途上国は、CTCNを活用して気候変動対策技術の導入・普及促進やそのための環境整備を進める。
同時に、途上国の規制等を、導入技術が適正に活用されるよう、調整なども行う。 - 気候変動対策技術の導入障壁をCTCN TAを通じて取り除き、当該技術を活用したJCM設備補助事業等のプロジェクトを実施する。
- JCMプロジェクトにより当該気候変動対策技術の活用が途上国の環境、経済、福祉にとって有益であることを示し、そのスケールアップや普及展開のために、GCF(緑の気候基金:Green Climate Fund。UNFCCCの資金メカニズムの一つ)の資金を活用する。
- 当該気候技術の有用性が広く認知され、民間ビジネスベースでの自律的普及が促される。
CTCNの技術支援(TA)プロジェクト
プロジェクトの種類
CTCNの技術支援プロジェクトには、短期間で実施される簡易な「ファストTA」と通常のTAがあります。
種類 | ファストTA | TA |
---|---|---|
予算上限 | ~1.5万USD | ~25万USD |
支援提供 までの流れ |
途上国政府を通じてリクエスト提出 | |
CTCNコンソーシアム機関が実施内容(仕様=「レスポンスプラン」)を策定 | ||
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支援実施期間 | 2ヶ月未満 | 1年間程度 |
TAセクター別内訳(気候変動緩和策)
TA支援種類別内訳
TAで実施される支援の内容の内訳(出典:CTCNウェブサイト)
上記の支援種類は、対象途上国の事情(障壁・ニーズ等)と気候変動対策技術の導入との関係で、適当なものを実施することとなるので、進出を目指す日本企業に資する技術支援の内容を吟味して決定することとなります。その場合、日本企業は技術専門性に基づく助言・研修等を途上国に行い、対象技術の導入を促進することに資する技術支援を実施することになります。
プロジェクトの流れ
- 途上国NDEから、技術支援に関するリクエストフォームをCTCN事務局に提出。
- 気候技術センター(CTC:CTCN事務局+コンソーシアム機関で構成)は、途上国からのリクエストをベースに、技術支援計画(レスポンスプラン)を作成し、公募(国際入札)。
- 登録されたネットワーク機関(N)のみが応札・落札でき、技術支援プロジェクトを実施。
(※ 予算規模1.5万ドル以上の案件の場合)
環境省によるCTCN技術支援案件形成支援
環境省では、CTCNを活用した本邦企業等による優れた気候変動対策技術の海外移転・導入促進、普及展開への貢献のために、CTCN技術支援案件の発掘・形成を支援しています。
具体的には、
- 国内における海外展開希望技術の特定(企業等の要望等をヒアリングを通して)、
- 当該技術のホスト国への導入・普及のための障壁の特定、
- ホスト国ニーズを踏まえた、ホスト国側アプリカント機関・NDEとの調整、
- 具体的な技術支援内容の検討、
- ホスト国側NDE等関係機関との協議を通じた、CTCNリクエストフォーム案の作成支援、
の諸活動を通じて、CTCN技術支援案件を組成します。
その後、当該CTCN技術支援案件を、日本企業等と共に国内ネットワーク機関が実施して、対象技術のホスト国への導入につなげます。国内ネットワーク機関では、技術的専門家として日本企業と協力して(ネットワーク機関との委託契約等による)技術支援を実施することで、CTCN技術支援後に円滑に対象技術の導入・普及に進めることが期待されます。
参考:CTCNに関係する用語や機関
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コンソーシアム機関: CTCNをホストする組織の連合体(コンソーシアム)。国連環境計画(UNEP)及び国連工業開発機関(UNIDO)を中心として、以下の機関をパートナーとして構成される。
- アジア工科大学(AIT)(タイ)
- Bariloche Foundation(アルゼンチン)
- 科学工業研究委員会(CSIR)(南アフリカ)
- ドイツ国際協力公社(GIZ)
- Environment and Development Action in the Third World(Enda Third World)(セネガル)
- 米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)
- エネルギー研究所(TERI)(インド)
- オランダ応用科学研究機関(TNO)
- 熱帯農業研究高等教育センター(CATIE)(コスタリカ)
- UNEP DTUパートナーシップ
- UNEP-DHIパートナーシップ水環境センター
- 国際アグロフォレストリー研究センター(ICRAF)(ケニア)
- NDE(National Designated Entity):各国政府に設置されるCTCN窓口機関。各国NDE及び担当者については、CTCNウェブサイトで公開されている。
(https://www.ctc-n.org/countries) - アプリカント:技術支援を要望する途上国の組織。ここから当該国のNDEに要望が上げられ、NDEの承認を受けた後に正式にCTCNに技術支援の要請(リクエスト)が提出される。