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交通分野関連技術情報

大気汚染の改善

大気汚染の改善

途上国では、特に大都市の大気汚染が深刻化しています。自動車排ガスは主な原因のひとつです。大気汚染対策では、排ガス規制などの施策導入と、これを実現させるための技術の普及を一体的に進めることが重要です。

このページでは、交通分野に関連する大気汚染改善のための施策や法規制と、大気汚染改善に資する技術を例示します。(2023年3月22日更新)

大気汚染の改善のための政策目標、取組み、技術

政策目標

大気汚染防止・大気質改善による健康と環境保全を目標として、我が国の大気環境基準を定め、大気汚染対策を実施しています。

大気汚染の改善のための取組み

排出源対策(規制的手法):単体規制(新車)

自動車排出ガス基準​
  • 自動車の種別毎に、CO・NMHC・NOx・PM等に関し排出基準を設けています。
  • 規制は1966年から始まり逐次強化しています。ディーゼル重量車においては1994年と比較して、NOx基準は7%に、PM基準は1%の水準に、ガソリン・LPG乗用車においては1973年と比較して、NOx基準は2%に、HC基準は3%の水準になっています。

排出源対策(規制的手法):車種規制(使用中の車両)

自動車NOx・PM法
  • 特に自動車交通が集中し大気汚染が著しい都市部地域を対象に、使用過程車に対するNOxとPMの規制値を設定しています。
  • また、当該都市部地域内の対象自動車を30台以上保有する事業者に対して、自動車の使用に関する計画の策定及び報告を義務づけています。
騒音規制
  • 自動車騒音に対しては、道路交通規制等の措置をとるよう要請する限度が定めてられています。​
  • また、自動車単体から発生する騒音に対しては、自動車騒音低減技術の進展を見据えつつ、自動車交通騒音への影響や、国内の走行実態及び国際基準への調和等を考慮した許容限度が定められています。​

排出源対策(規制的手法):燃料規制

燃料成分規制
  • 自動車排出ガスの悪化を防止する観点によりガソリン及び軽油に含まれる物質の量などを規制しています。
  • ガソリンにおいては、硫黄:10ppm以下、ベンゼン:1vol%以下などが決められ、軽油においては、硫黄: 10ppm以下などが決められています。

排出源対策(その他):認定制度​

大気環境配慮型SS(e→AS)認定制度
  • VOCの一種である燃料蒸発ガスを回収する機能を有する給油機の普及促進を目的に、当該給油機を導入している給油所を大気環境配慮型SS(e→AS)として認定しています。認定は回収率に応じ行っています。
e→AS(イーアース)認定証
e→AS(イーアース)認定証

実態把握・政策評価ツール

大気汚染モニタリング
  • 大気汚染の状況は都道府県等が設置する測定局を通じて継続的に測定されています(常時監視)。光化学オキシダントやPM2.5に関する緊急時の措置や、高濃度地域の把握、政策や施策の効果の把握等を目的としています。
PM2.5排出インベントリ
  • 環境省では、「PM2.5等大気汚染物質排出インベントリ及び発生源プロファイル業務」でPM2.5等大気汚染物質排出インベントリの整備・更新を行っています。
  • 各排出セクターからの排出量の経年変化を把握し、各排出セクターにおける排出抑制の取組の進捗状況等を評価するとともに、PM2.5 等の予報、発生源対策の検討及び対策効果の評価を行うツールである、大気環境シミュレーションモデルの入力情報として活用しています。
大気汚染濃度数値モデル
  • PM2.5や光化学オキシダントなどの大気汚染物質の分布や動きを把握し、予測するために重要なのが数値シミュレーションです。
    大気汚染濃度数値モデル
    https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/64/column4.html
  • 環境省ではPM2.5や観測された光化学オキシダント濃度等を詳細に解析して現状を把握し、生成機構に関する新たな知見を収集するとともに、前駆物質の排出インベントリやシミュレーションモデルの精緻化により、PM2.5や光化学オキシダント生成に係る寄与率を明らかにする研究を進めています。また、これまでの排出規制や自主的取組による前駆物質削減が光化学オキシダント濃度の変化にどれほど寄与したか、シミュレーションを活用して検証し、大気環境等に関する将来予測や、光化学オキシダント対策に必要な取組、削減シナリオを検討しています。​

大気汚染の改善のための技術

Avoid(回避)技術

公共交通志向型都市開発(TOD)技術
  • 自動車に依存せず、公共交通に基礎を置いた都市づくりを実現するための都市開発です。鉄道や地下鉄、バス等の公共交通を重視して都市開発・整備を進めてきた日本は世界的にもTOD先進国のひとつとして見られています。
  • 柏の葉キャンパスでは、持続可能な環境型都市交通の先進的なモデルとして、公共交通志向型都市開発(TOD)の理念を基礎とした交通体系が組み立てられ、また、柏駅周辺と機能的役割分担のもと連携し、都市拠点性の強化を図るため両者を結ぶ都市交通軸の形成が図られています。

Shift(シフト)技術

LRT・BRT・新都市交通システム
  • 公共交通サービスを高度化する技術として、路面電車(Light Rail Transit:LRT)や専用バスレーンを走行する輸送量を強化したバス(Bus Rapid Transit:BRT)などが挙げられます。
LRT・BRT・新都市交通システム
出典:富山市
  • 富山市では、鉄道やバスなどの公共交通を軸とした、その沿線の徒歩圏(日常生活に必要な機能が集積したエリア)が結ばれた「コンパクトなまちづくり」を目指して2003年にLRTプロジェクトを開始し、2006年4月に全低床式LRV愛称「ポートラム」の運行を開始しました。
LRT・BRT・新都市交通システム
出典:国立環境研究所 環境展望台

Improve(改善)技術:排出ガス後処理技術

ディーゼル車排出ガス​後処理装置(DPF、触媒)
  • ディーゼル車から特有に排出されるPMの対策としてDPFがあり、PM排出量は大幅に低減されます。DPFは、排出ガスを多孔質のフィルター等に通過させることによりPMを捕集する装置であり、フィルターに一定程度のPMが堆積されると、フィルター温度を上昇させてPMを酸化させることにより処理しています。
  • 酸化触媒は、ディーゼルエンジンの排ガス中に含まれるPMを、白金等の触媒酸化作用で除去する装置です。DPFの除去効率を高めるための前処理装置として用いられています。
  • 最近では、DPFと触媒を組み合わせて排出ガス全般を処理するとともに、フィルタを連続的に再生するDPFの開発も進んでいます。

Improve(改善)技術:次世代自動車

代替燃料車(CNG)
  • 天然ガスを圧縮して高圧ガス容器に貯蔵し、それを燃料として走る自動車です(CNG車)。天然ガス供給ステーションの整備が必要になります。
  • 富山市はインドネシアのスマラン市と協力協定を締結し、スマラン市の交通公社が所有するディーゼルバスのエンジンをCNG利用可能なハイブリッドエンジンへ改造しています。
代替燃料車(CNG)
http://gec.jp/jcm/jp/projects/18pro_ina_03/
ハイブリッド車
  • ガソリンエンジンやディーゼルエンジンは走行効率の良いときだけ駆動させ、エンジンを代替や補助するモーターで走行するとともに、減速、制動時の回生エネルギーを回収し、駆動用エネルギーとして再利用する自動車です。

Monitoring(監視)技術

大気汚染物質測定機・騒音計
  • 環境省が環境大気常時監視マニュアルで定める測定方法に則り、測定対象物質ごとに信頼性の高い測定機器が開発・販売されています。
  • また環境省の騒音常時監視マニュアルに適合した騒音計が市販されています。
大気汚染モニタリングデータ公表システム
  • 大気汚染物質測定局の1時間値(速報値)を環境省ホームページで情報提供しています。濃度分布は地図上で表示されます。「そらまめ君」の愛称で親しまれています。
  • PM2.5等の汚染濃度を数値モデル等で予想し、インターネットで公開する事例があります。
大気汚染濃度数値モデル
  • 環境省の支援の下、国立環境研究所が「大気汚染予測システム」 (Visual atmospheric ENvironment Utility System) を開発・公表しています。
  • VENUS は、日本周辺の大気汚染物質の動きを予測する数値シミュレーションシステムです。数十種類の大気汚染物質についてシミュレーションを行なっていますが、 VENUSウェブサイト では、 大気汚染物質の中でも特に関心の高い PM2.5 とオゾンの2種類について、 予測結果を配信しています。
VENUS
https://venus.nies.go.jp/