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交通分野関連技術情報

脱炭素

脱炭素

気候変動問題は人類共通の喫緊の課題です。途上国では、経済発展を達成しつつ脱炭素を実現するという難題に取り組んでいます。脱炭素社会の実現のためには、温室効果ガス排出削減に関する施策の導入と、脱炭素技術の普及を一体的に進めることが重要です。

このページでは、交通分野に関連する脱炭素に向けた政策目標、取組み、技術を例示します。(2023年3月22日更新)

脱炭素に向けた政策目標、取組み、技術

政策目標

「2050年カーボンニュートラル」宣言、2030年度46%削減目標に向けて、運輸分野で2030年35%削減(2013年度比)を目標として、地球温暖化対策法に基づき計画を策定し取組を推進しています。

日本のGHG排出量、運輸部門の内訳

  • 我が国の2020年度における温室効果ガス排出量のうち、CO2排出量は約9.7億[t-CO2]です。このうち運輸部門からの排出量は約1.9億[t-CO2]となっており、全体の約20%を占めています。
  • 運輸部門からのエネルギー起源CO2排出量は、 約6割が旅客輸送、 約4割が貨物輸送に起因しています。
  • 輸送機関別に見ると、自家用自動車・貨物自動車に起因する排出量が、全体の約8割を占めています。

    ※国立環境研究所温室効果ガスインベントリオフィスより

    エネルギー起源CO2排出量の部門別内訳

    エネルギー起源CO2排出量の部門別内訳

    運輸部門からのエネルギー起源CO2排出量の内訳

    運輸部門からのエネルギー起源CO2排出量の内訳

    出典:2020年度(令和2年度)温室効果ガス排出量

施策・取組み

技術

脱炭素に向けた取組み

自動車単体対策

次世代自動車の率先導入・導入支援
  • 環境性能の優れた電動車(電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HV))の普及拡大を推進し、2035年までに乗用車新車販売に占める電動車の割合を100%にすることを目指します。​​
  • 新たに導入される自家用車・社用車・公用車・廃棄 物収集運搬車・タクシー・短距離用配送車両等はできるだけ電動車とし、再エネ電気の活用や 再エネ由来水素、合成燃料(e-fuel)等の燃料と連動させたゼロ・カーボン・ドライブを推進しています。
税制上の優遇措置
  • 環境性能の優れた自動車に対して税金の負担を時限的に軽減する税制上の特例措置として、「エコカー減税」と「グリーン化特例」の制度が設けられています。​
  • 「エコカー減税」は、自動車の車両重量に応じて課税される「自動車重量税」に対して適用され、「グリーン化特例」は、排気量等に応じて課税される「自動車税」及び「軽自動車税」に対して適用されます。2019年10月からは、環境性能の優れた車ほど自動車購入時の税が軽減される仕組みとして「環境性能割」が導入されています。
次世代自動車の性能向上に係る技術開発・実用化支援
  • 自動車部材の軽量化による燃費改善が期待できるセルロースナノファイバー、改質リグニン等の技術開発・社会実装等を進めます。
インフラ整備支援
  • 公用車/社用車等の電動化と再エネ設備をセットで導入することにより移動における脱炭素化を図るため、再生可能エネルギー発電設備と電気自動車等を同時購入し、地域住民向けにシェアリングする取組を支援しています。
  • また電動車は災害時の非常用電源としての役割も期待されることから、地域のレジリエンス強化にも貢献するために、充放電設備/外部給電機器の導入についても同時に支援しています。

レジリエンス強化の取組

脱炭素とレジリエンスの強化促進

  • 地域の再生可能エネルギーと動く蓄電池としての電気自動車(EV)等を組み合わせ、再生可能エネルギーの主力電源化とレジリエンス強化の同時実現を図る自立・分散型エネルギーシステム構築に対する支援を実施しています。
  • また、電気自動車(EV)のシェアリングサービスの活用や新たな地域モビリティ(グリーンスローモビリティ、LRT・BRT等)の導入を促進しており、さらには再生可能エネルギーとも積極的に組合わせていくことで脱炭素型地域交通モデル構築を支援します。

    ※グリーンスローモビリティは時速20km未満で公道を走ることができる電動車を活用した小さな移動サービスです。

グリーンスローモビリティ導入・実証事例
富山市グリーンスローモビリティ運行社会実験「Boule BaaS」
出典:富山市

公共交通機関等の利用促進:公共交通の利用

LRT(Light Rail Transit)、BRT(Bus Rapid Transit)の整備推進
  • マイカーへの依存度が高い地方都市部を中心に、CO2排出量の少ない公共交通へのシフトを促進するた め、LRT及びBRTの車両等の導入支援を行います。

鉄道、船舶、航空分野の対策

鉄道分野の脱炭素化

  • 鉄道事業等における省CO2化を促進するため、エネルギーを効率的に使用するための先進的な省エネ設備・機器の導入を支援します。

地域の公共交通×脱炭素化移行促進事業(国土交通省連携事業) (令和5年度予算(案)) 2023年3月10日時点
https://www.env.go.jp/content/000097300.pdf

船舶分野の脱炭素化

  • 自治体と連携してガス燃料船の重要構成部品の省CO2な製造プロセスを実現し、他地域等に展開することで、地域の脱炭素化に貢献するとともに、ガス燃料船の普及拡大による海事分野の脱炭素化を促進しています。

空港・港湾・海事分野における脱炭素化促進事業(国土交通省連携事業)(令和5年度予算(案) ) 2023年3月10日時点
https://www.env.go.jp/content/000097301.pdf

航空分野の脱炭素化

  • 空港内及び空港周辺の未利用地を有効活用した太陽光発電・蓄電池の導入による再エネ拠点化と、空港施設・空港車両や航空機からのCO2排出削減を組み合わせることで、空港におけるカーボンニュートラルの実現を支援し、同時に地域の脱炭素化と防災性の向上も目指します。

空港・港湾・海事分野における脱炭素化促進事業(国土交通省連携事業)(令和5年度予算(案) ) 2023年3月10日時点
https://www.env.go.jp/content/000097301.pdf

脱炭素物流の推進

トラック輸送の効率化

  • 現状で高コストのEV/HVトラック・バスおよび充電インフラへ補助を行い、普及初期の導入加速を支援しています。EVトラックおよびバスにおける性能評価実証事業を実施、電動車両市場拡大を図っています。

環境配慮型先進トラック・バス導入加速事業(国土交通省・経済産業省連携事業)(令和5年度予算(案)) 2023年3月10日時点
https://www.env.go.jp/content/000097302.pdf

港湾における取組

  • 我が国の輸出入の99.6%を取り扱い、CO2排出量の約6割を占める産業の多くが立地する港湾において、コンテナターミナル等においてコンテナ貨物を取り扱うハイブリッド型トランスファークレーン、ハイブリッド型ストラドルキャリア等の荷役機械、接岸中の船舶へ電力を供給する設備等の、脱炭素化に配慮した港湾機能を導入を支援することにより、港湾のカーボンニュートラル化を促進します。

空港・港湾・海事分野における脱炭素化促進事業(国土交通省連携事業)(令和5年度予算(案) ) 2023年3月10日時点
https://www.env.go.jp/content/000097301.pdf

商用⾞の電動化

  • 運輸部門は我が国全体のCO2排出量の約2割を占めており、そのうちトラック等商用車からの排出は約4割にのぼります。2050年カーボンニュートラル及び2030年度温室効果ガス削減目標(2013年度比46%減)の達成に向け、商用車(トラック・タクシー)の電動化に対し補助を行い、産業競争力強化・経済成長と温室効果ガスの排出削減を目指しています。

商用⾞の電動化促進事業(経済産業省、国⼟交通省連携事業)(令和5年度予算(案)) 2023年3月10日時点
https://www.env.go.jp/content/000100914.pdf

分野横断的 二国間クレジット制度(JCM)の推進

二国間クレジット制度(JCM)

  • 途上国等への優れた脱炭素技術、製品、システム、サービス、インフラ等の普及や対策実施を通じ、実現した温室効果ガス排出削減・吸収への我が国の貢献を定量的に評価するとともに、我が国のNDCの達成に活用するため、JCMを構築・実施していきます。これにより、官民連携で2030年度までの累積で、1億t-CO2程度の国際的な排出削減・吸収量の確保を目標としています。

脱炭素移行に向けた二国間クレジット制度(JCM)促進事業 (令和5年度予算(案)) 2023年3月10日時点
https://www.env.go.jp/content/000100978.pdf

分野横断的 脱炭素ライフスタイルへの転換(交通関係のみ抜粋)

エコドライブ

  • 乗用車、自家用貨物車の運転者等に対し、地球温暖化対策に資するエコドライブの普及啓発、行動変容の促進等を行っています。

ナッジ×デジタルによる脱炭素型ライフスタイル転換促進事業(令和5年度予算(案)) 2023年3月10日時点
https://www.env.go.jp/content/000100919.pdf

エコドライブ普及・促進アクションプラン

関係4省庁(警察庁、経済産業省、国土交通省及び環境省)のエコドライブ普及連絡会を中心とした広報活動等により、国民の意識向上を図り、エコドライブ普及のための環境整備を行います。これまでに、エコドライブとして推奨すべき「エコドライブ10のすすめ」を策定し、広報啓発を行ってきています。

カーシェア

  • 再生可能エネルギーと電動車の同時導入により地球温暖化対策を促すとともに、カーシェアリングの普及啓発、行動変容の促進を図っています。​
  • 公用車/社用車等を率先して再エネ設備導入とセットで電動化することにより、移動の脱炭素化を図るとともに、遊休時には地域住民の足としてシェアリングする取組を支援しています。

再エネ×電動車の同時導入による脱炭素型カーシェア・防災拠点化促進事業(令和4年度2次補正予算額) 2023年3月10日時点
https://www.env.go.jp/content/000090828.pdf

脱炭素技術

Avoid(回避)技術

公共交通志向型都市開発(TOD)
  • 自動車に依存せず、公共交通に基礎を置いた都市づくりを実現するための都市開発です。鉄道や地下鉄、バス等の公共交通を重視して都市開発・整備を進めてきた日本は世界的にもTOD先進国のひとつとして見られています。
  • 柏の葉キャンパスでは、持続可能な環境型都市交通の先進的なモデルとして、公共交通志向型都市開発(TOD)の理念を基礎とした交通体系が組み立てられ、また、柏駅周辺と機能的役割分担のもと連携し、都市拠点性の強化を図るため両者を結ぶ都市交通軸の形成が図られています。

Shift(シフト)技術

LRT・BRT・新都市交通システム
  • 公共交通サービスを高度化する技術として、路面電車(Light Rail Transit:LRT)や専用バスレーンを走行する輸送量を強化したバス(Bus Rapid Transit:BRT)などが挙げられます。
LRT・BRT・新都市交通システム
出典:富山市
  • 富山市では、鉄道やバスなどの公共交通を軸とした、その沿線の徒歩圏(日常生活に必要な機能が集積したエリア)が結ばれた「コンパクトなまちづくり」を目指して2003年にLRTプロジェクトを開始し、2006年4月に全低床式LRV愛称「ポートラム」の運行を開始しました。
LRT・BRT・新都市交通システム
出典:国立環境研究所 環境展望台

Improve(改善)技術:ゼロエミッション自動車

電気自動車(EV)・EV充電ステーション
  • 電気自動車
    電気自動車(EV、Electric Vehicle)は、バッテリーに蓄えた電気をモーターに供給し、走行のための駆動力を得る自動車のことです。電気自動車(EV)の一般向け販売が始まったことや、高性能バッテリーの登場などにより、省エネ・脱炭素化・低公害の次世代自動車の代表的存在として期待されています。
  • EV充電ステーション
    コンビニや道の駅、高速道路のサービスエリア、商業施設等、短時間でEVを充電する必要がある場所への急速充電器の設置が進められています。急速充電器はは10~50kVAの大電力を供給でき、空の状態から30分~60分で80%程度まで充電できます。
電気自動車(EV)・EV充電ステーション
出典:国立環境研究所 環境展望台

レジリエンス強化の取組

脱炭素地域交通
(レジリエンスを高めるセクターカップリングの事例)

  • 小田原市では、再生可能エネルギーを活用した地域新電力と蓄電池を搭載するeモビリティサービス(電気自動車のカーシェアリングサービス)導入を組み合わせたセクターカップリングを目指し、電気自動車を移動手段とするだけなく、災害発生時には「地域の非常用電源」として貸し出すサービスを取り入れることで、誰もが安心して利用でき且つレジリエンスを高める脱炭素型の地域交通の仕組みを構築しています。

    ※セクターカップリングとは、電力部門を交通部門や産業部門、熱部門など他の消費分野と連携させることで、社会全体の脱炭素化を進める社会インフラ改革の構想です。

燃料電池自動車(FCV)・FCV水素ステーション
  • 燃料電池自動車(FCV、Fuel Cell Vehicle)は、水素と酸素の電気化学反応によって電力を得る燃料電池(FC)を電源とする電気自動車のことです。
  • FCそのもののエネルギー変換効率が高いため、全体として高いエネルギー効率が期待できます。走行時に温室効果ガスや大気汚染物質を発生しないなど、地球温暖化対策や大気環境保全にも役立つため、次世代自動車として期待されています。
燃料電池自動車(FCV)・FCV水素ステーション
出典:脱炭素化にむけた水素サプライチェーン・プラットフォーム​
燃料電池フォークリフト
  • 燃料電池フォークリフトは、水素燃料電池を動力源とする産業用フォークリフトです。燃料(水素)補給も軽油やガソリンと同様に手軽であり、更にスペアバッテリー、バッテリー置場、充電装置が不要になるため、次世代産業として導入への取組が進められています。
燃料電池フォークリフト
出典:脱炭素化にむけた水素サプライチェーン・プラットフォーム
ゼロカーボントラック・バス
  • 物流におけるCO2排出量を減らすために開発・導入が進められている、EVトラックや燃料電池トラック。宅地配送向けの小型(3.5t未満)のEVトラックや大型の燃料電池トラックの開発・商業化が国内では進められています。燃料電池バスについても、動力性能や信頼性、耐久性向上などに向けた技術開発が進められています。

「燃料電池小型トラックの技術開発・実証」(令和元年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業)の車両開発

ゼロカーボントラック・バス
出典:㈱東京アールアンドデー
環境省委託業務 燃料電池小型トラック(2019年)

Monitoring(監視)技術

道路交通量測定機器システム
  • 画像認識型交通量観測装置等、道路に設置されたカメラの映像に対して画像認識技術を用いた解析を行い、交通量を観測するもの。