現地の声:お伝えしたいこんな魅力
2026.3
【シリーズ】アフリカ
第1回(全4回)「環境・エネルギー技術の実践場」
– 都市と農村、環境課題の共通性と多様性 –ⅰ

はじめに:訪れた8カ国で感じた「道端の風景」の共通点
アフリカ大陸の人口は2026年1月時点ですでに15.6億人規模に達しており、2050年には約25億人まで増えると見込まれ、都市化と産業化に伴い、「水・衛生」「廃棄物」「電力」「交通」「防災・気候適応」などのインフラ需要が一気に膨らむと考えられています。しかし、こうした社会基盤を整える投資は不足しており、アフリカ開発銀行(AfDB)はインフラ整備に年間1,300〜1,700億ドル規模が必要だと指摘していますⅱ。 日本から見てもアフリカは「遠い新興市場」ではなく、日本の強みである高効率・高耐久、運用まで含めた品質管理モデルを活かせる非常に実需の大きい現場でしょう。アフリカ各国だけでなく地域一帯の需要を受けて、案件を広げられる市場であること、地政学的にもサプライチェーン(原料調達・製品製造・販売に至るまでの一連の流れ)を分散することで世界情勢の変動に対して強くなれること、日本国内だけでは削りにくいCO2排出量の削減を経済成長と同時に達成する助けになれること…… 環境負荷を抑えたインフラをパッケージで整備する理由は尽きません。
かくいう私も、人口が増える最後の大陸として興味を持ち始めてアフリカを学ぶ学生団体に入会しましたが、2,000から3,000ほどもあるとされる多様な民族ⅲとその文化を有するパワフルさのファンになってしまい、専門とするエネルギー分野でアフリカと日本をつなぐ仕事をしたいと思うようになりました。研修とインターンシップ、休暇の旅行を通じて、2024年以降で8つのアフリカの国(ケニア・ジンバブエ・ウガンダ・エチオピア・エジプト・ベナン・タンザニア・ナイジェリア)を訪れ、現在はナイジェリアで生活しています。
しかし、日々の暮らしで日本と全く同じ「きれいさ」を求めることは困難で、どの国でも例外なく街中に突如現れるごみの埋立地と大気汚染の存在を見てきたように思います。砂・埃・煙・排気ガス、と大気汚染の種類も各地それぞれですが、生活に忍び込んでいることへの課題感は共通で、環境課題とQOL(生活の質)に地続きであることを痛感しています。
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東京にも似た街の造りで、 |
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都市は発展している傍ら、砂埃や排気ガス、 |
都市:生活に巣食う環境課題の共通性
どこのサブサハラⅳの国にも「都市」と呼ばれるエリアは存在し、初めてその都市部を訪れた日本人が「思ったより道路も舗装されていて都会である」ことに驚くという話をよく聞きます。しかしながら、では日本のように徒歩移動できるかというと、難しい。理由としては、治安対策はもちろんなのですが、空気の埃っぽさと歩道の歩きにくさが移動を難しくしていることが多々あります。
例えば、東アフリカ最大の国エチオピアの首都・アディスアベバでは近代的な建築現場が多く目につきますが、それらから絶えず砂や埃のようなものが飛んできていました。ケニアの首都・ナイロビでも通勤渋滞が毎日のように続き、周囲を山に囲まれていて空気が停滞するからか、自動車の排気ガスなどが常に空気中に留まっていることを感じます。ナイジェリア第一の都市・ラゴスは標高が低く海に面している分、空気が停滞している印象はナイロビよりも少ないですが、車の排気ガスのほか、水上スラムのマココという地域から発せられる、魚を燻す煙が立ち込めていることがあります(シリーズ第4回・ナイジェリア都市編で詳しく掲載予定です)。
日本の都市のように、歩行者に優しい歩道の設計やバリアフリーがほとんどないということも歩きにくさのひとつですが、この空気では「健康のために歩こう」と思ってもかえって健康を損ねてしまいかねません。
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気候変動とともに不定期になっている雨期。 |
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砂埃もあって、遠方は霞む |
その他にも、都市生活で日々少しずつ暮らしにくさを感じるシーンがあります。ラッシュアワーに道路が大渋滞に陥ること、雨が降れば道路が冠水すること、ごみの分別が存在せず全てのごみが最終集積所に持ち込まれて周囲に臭いが広がること、街中でも小さいごみ山や道路の側溝に詰まるごみがあちこちにあり衛生的に心配なこと。もちろん気さくな人たちに囲まれたここでの暮らしを私はとてもとても気に入っているのですが、それでもやはりちょっとしたごみ山の臭い・大気汚染などが地味なストレスとして当然のように日常に入り込んでいます。
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街中の水路の水の黒さに驚く |
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この水準のごみのポイ捨ては街中で非常に多い |
農村:基幹インフラの不在
では農村部はというと、不便の種類が都市とは変わってきます。
ウガンダとケニアの農村に短期滞在したことがあるのですが、自然豊かで自給自足の美味しい食材があるところが多く、その代わり道が凸凹だったりグリッド電源ⅴが家までは引かれていなかったりと、都市では「改善」が求められるインフラがそもそも「不在」な様子を目にしました。インターンを通じて2カ月ほど滞在させていただいたタンザニアの山村でも、周辺の民家に電気・水道・道路といった各インフラがまだない様子を見ています。ごみ収集システムはないので穴を掘って埋めるし、炊事は薪と三石かまど(大き目の石を3つ三角形の頂点上に置き、鍋を乗せてかまどとして使用するスタイル)、「近所の」友達の家を訪ねるのに獣道を2時間歩くこともありました。都市の騒がしさとは対照的ですが、ここにも異なるタイプの負担がありました。
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農村部は空気が澄んでいて、 |
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低圧の電線は、「大通り」沿い |
顕在・潜在・不一致、ニーズの三層構造
これらの様子から、私たちから見て課題がたくさんあること、そしてそれらの課題のいくつかは現地では当然のことと捉えられていて課題と認識されていないということが言えるでしょう。
大きく三種類に分けてみると、
①顕在ニーズ:現地の人々が直接求めるもの
②潜在ニーズ:現地ではあまり自覚されていないが、日本人の視点で見れば改善が必要な部分
③不一致ニーズ:日本企業が「良い」と思っても、現地では必要とされない領域
これらがあるのではないでしょうか。
①顕在ニーズ
顕在ニーズがある環境・エネルギー分野の課題の例としては、交通と電力があると思います。街の渋滞にはほぼ全ての現地の方が文句を言い、ガソリン代が上がると運転手は全員困ったと言い、どんな富裕層の家でも公共電力の停電のせいでジェネレーター(発電機)と蓄電池の用意の手間がかかっている。これらの解決手段には、顕在ニーズがあります。環境課題以外でも、体感的には子どもを学校に行かせたい・インターネット通信が欲しいなどが顕在ニーズだと感じますが、環境面では交通と電力が圧倒的です。
②潜在ニーズ
次に潜在ニーズとしては、雨が降っても冠水しないような道路の排水機能、ごみ焼却炉、ベターな道路設計、安全に飲める水道水などが挙げられます。現在私が生活するナイジェリアでも、冠水すると渋滞になって困るという理由で市民の多くも今の道路事情を良くは思っていないのですが、慣れてしまっていたり、「雨期だからしかたないものである」と捉えてしまったりすることがほとんどのように見受けます。
一方で、ごみの最終集積所が街の真ん中にあり、そこではまだ使えるものを選り分ける人たちがいて生計を立てていますが、これには現地の一部の知人も課題意識を持っています。現地にもいろいろな層の人たちがいて、課題意識も人それぞれです。現地でもごく一部の人に自覚されているものの、マジョリティ(大多数)の課題意識になっていないものは、いったん潜在ニーズと区分してみました。
③不一致ニーズ
そして不一致ニーズは、日本や欧米、東南アジアにおいては環境課題として認識されているアプローチであるものの、サブサハラではニーズがないものです。卑近な例を出すと、アフリカでは気候変動対策より先に、国民に仕事があってその日の食事の心配をしなくてよいようにするために経済を回していくことに重きが置かれる傾向があります。アフリカ地域では全世界の人口に占める割合が約18%ある一方、CO2排出量に占める割合が3.64%(2023年時点)ⅵなので、実際に民間レベルでできることも大層限られているのかもしれません。環境課題についてインタビューするとまず挙げられるのは気候変動より、自分の街中の衛生環境や、森林伐採のほう。再生可能エネルギーでの発電割合も多い国がたくさんあるのですが、「環境にやさしいから」ではなく「最もAffordable(お手頃価格)だから」という理由で広く利用されています。
②と③は紙一重ですし、私自身もニーズを見誤ってしまうことはあるだろうと危惧していますが、この3層を見分けようとコミュニケーションを取り続けてみることが現地理解の第一歩になるのではないかと考えています。
アフリカはビジネスが生まれる最先端の現場
ここまで少し振り返るだけでも課題だらけに感じましたが、古今東西、課題があるからこそ解決策が生まれ、ビジネスが生まれています。既存のインフラや規制が少ないためしがらみ・制約も少ないサブサハラだからこそ、そこに世界の最先端水準の技術が導入され、モバイルマネーやスマートフォン利用といったリープフロッグⅶが発生しました。環境負荷を抑えたインフラも、彼らの経済発展を待つことなく、今からすぐパッケージで整備できるチャンスがあると感じています。
それでは、本記事を含め4回の連載にて、アフリカを「環境・エネルギー技術の実践場」として見つめる視点を、私が実際に暮らした3地域に関して、個別にさらに深堀りさせていただきます。
次回は、タンザニアの事例のご紹介です。

アフリカ最大級のスラム・キベラスラムでは、
バイオ燃料のプリペイド購入ができるサービス「KOKO」が浸透しており、
モバイルマネー「M-PESAⅷ」での支払いを受け付けている
(ケニア・ナイロビ)
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執筆者紹介 MIKOTO Holdings株式会社 インターン 2024年7月より休学し、タンザニアのコーヒー農園でカーボンクレジット事業等に携わるインターン、その後同年10月よりケニアの現地企業でエンジニアリングコンサルティングのインターンに従事。2025年6月以降は、ナイジェリアのサンダル製造スタートアップでのインターンとして働いている。将来エネルギー分野に関する多国間協力に携われるよう実地経験を積むほか、学内外の学生団体ⅸを中心に、アフリカ渡航のサポートやアフリカそのものへ関心のある同世代への発信も行っている。 |
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ⅰ 冒頭写真:JICAナイロビ事務所を持つ高層ビルからの眺め
ⅱ 出典:AFRICAN DEVELOPMENT BANK GROUP. “From millions to billions: Financing the development of African cities”(2023)
https://www.afdb.org/en/documents/millions-billions-financing-development-african-cities
ⅲ 出典:Ethnicity is a fundamental part of African societies( Otieno, 2024)
https://www.dandc.eu/en/article/africa-question-who-person-includes-which-ethnic-group-they-belong-these-affiliations-have
ⅳ サハラ砂漠より南に位置する地域
ⅴ 発電所から家庭・企業まで電力を送る「送配電網(グリッド)」となる電力系統のこと
参考:なるほど! グリッド
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/grid/index.html
ⅵ 出典:Africa – Countries & Regions. IEA
https://www.iea.org/regions/africa
ⅶ 新興国において新しいサービス等が、先進国が歩んできた技術進展を飛び越えて一気に広まること
参考: 新興国・途上国における変化-「リープフロッグ」の出現
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/html/nd111320.html
ⅷ アフリカのイノベーションの原点:「M-PESAを知ろう」椿 進 - AAIC Holdings
https://aa-ic.com/report/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%8E%9F%E7%82%B9_m-pesa%E3%82%92%E7%9F%A5%E3%82%8D%E3%81%86/
ⅸ 参考:貴方のアフリカ色を見つけませんか? MPJ Youth official website
https://www.mpjyouth-official.com/









