現地の声:環境省駐在員からの
耳寄り情報
2025.7
パプアニューギニア
- 豊かな自然に衛生インフラの不足が課題 -
豊かな自然の中に暮らす多様な部族たち
パプアニューギニア独立国は、ニューギニア島の東半分及び島嶼部で構成され、日本から南に約5,000kmに浮かぶ島国です。人口は1,032万人、国土面積は約46万㎢(日本の1.25倍)でその80%を森林が被覆しており、海陸共に手つかずの豊かな自然が残されています。多様な部族社会を形成し実に800の言語が存在すると言われ、意思疎通手段として成立したトク・ピジン語が英語と共に公用語として常用されています。
金・銅・ニッケル・LNGといった地下資源に恵まれ、とりわけLNGは日本の輸入相手国中第5位(2023年)であり、現在稼働中のPNG・LNGプロジェクトに続き、今後第2、第3のLNGガス田の稼働を控え、LNGの安定した調達先として期待されています。水産分野においてはカツオ・マグロの好漁場として知られ、日本のマグロ漁船がパプアニューギニア沖合で操業し冷凍マグロを日本に供給しており、新型コロナウィルス流行前の2021年以前は日本への直行便で生マグロを輸送していました。農業分野ではコーヒー、カカオ、パーム油を主要産業とし、山岳部の冷涼な地域ではイチゴの栽培が行われています。最近では日・パプアニューギニア民間企業による協働により大規模な稲作事業を展開し、肥沃な土地と年間を通した温暖な気候により3期作を実現しています。
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次々に水揚げされるキハダマグロ |
日本との関係
日本との関係は太平洋戦争中の旧日本軍によるパプアニューギニア進駐に始まります。各地に戦跡が残されており、司令官であった山本五十六元帥が搭乗し撃墜された航空機はブーゲンビル島ブインに当時のまま安置されています。また、ニューブリテン島ラバウルにおいては当時作戦司令部として利用されていた壕(山本バンカー)、野戦病院、海中に沈む零戦を見ることができます。日本によるODAは1974年のニューアイルランド島ケビエンの国立水産大学校支援から開始され、以降インフラ、教育、保健、人材育成分野を中心に支援しています。ODAを通じて日・パプアニューギニアは良好なパートナーシップを構築しており、第2の都市レイに位置するナザブ空港改修事業ではマラペ首相の発案によりナザブ・トモダチ国際空港としてリニューアルし2023年3月に除幕式が催されました。2024年10月には日本による対パプアニューギニアODA50周年記念として祝賀セレモニーが開催され、同式典にはマラペ首相をはじめ閣僚が列席し、二国間の協力関係を確認する機会となりました。
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ナザブ・トモダチ国際空港 |
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山本元帥搭乗機の残骸 |
環境分野でも深まる日本との取組
環境分野においては2022年11月、エジプトで開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)にて日・パプアニューギニア両国は二国間クレジット制度(JCM)の構築に係る協力覚書に署名し、2025年3月首都ポートモレスビーにて第1回合同委員会(JC1)を開催しましたⅰ。JC1においてはJCMに係る規則及びガイドライン類が採択されました。今後JCMが本邦企業のパプアニューギニア進出を促し、ODA事業と共に両国関係の深化に寄与することが期待されます。
山岳地帯や離島に阻まれ、運輸・交通、電力、上下水道といった基礎インフラは依然として未整備であり、人的移動に制約があることから、人口の約85%が地方部に居住し、自給自足型の生活を営んでいます。地方部の生活環境に目を向けると、衛生インフラの未整備が深刻な課題となっています。沿岸地域では、桟橋上に設置された高床式トイレから排泄物を直接海洋に放出する方式が一般的であり、海洋汚染のリスクが懸念されています。一方、内陸部では、地中に掘った穴の上に設置されたピット式トイレが広く使用されており、土壌汚染のリスクがあります。廃棄物処理においても、体系的な管理は行われておらず、生ごみは道端への投棄、可燃ごみは各家庭で焼却、不燃ごみは穴に投棄した後、量を減らすために定期的に焼却する手法が用いられています。衛生インフラの未整備は住民の健康と生活の質に直結する課題となっており、遠隔地において有効な日本の環境技術や施設の導入のニーズがあります。
こうした状況の下で、日本の資金協力により、UNICEFが農村部であるモロベ州ナワァエブ地区と協力して水と衛生の改善支援を行い、ウェサン小学校を含む9つのコミュニティに給水施設を設置しました。同小学校には、男女別のトイレ6基、手洗い場、貯水タンク2基、安全な廃棄物処理のための焼却炉等を設置し、子どもたちの学習環境改善に貢献しましたⅱ。
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海にせり出した高床式トイレ |
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穴の上に設置されたピット式トイレ |
執筆者紹介 在パプアニューギニア日本国大使館 書記官 平成25年11月、環境省入省。 |
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マクロ情報:パプアニューギニア (2023年)
GDP(百万米ドル) | 30,729 |
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人口(百万人) | 10 |
1人あたりGDP | 2,957 |
(データ出所:世界銀行)
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ⅰ 『日・パプアニューギニア間の二国間クレジット制度(JCM)の第1回合同委員会を開催しました』
(2025年3月27日)
https://www.env.go.jp/press/press_04663.html
ⅱ 『パプアニューギニア:清潔な水と衛生的なトイレの設置で200人以上の生徒たちに支援』
(2023年9月1日)
https://www.unicef.org/tokyo/stories/2023/students-in-rural-school-get-improved-wash-facilities-Japanese