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2026.2

JPRSI 2025年度 第3回セミナー

フィリピンにおける環境ソリューションニーズ

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セミナー名 JPRSI 2025年度第3回セミナー (2025.12開催)
登壇者 ジーザス・G・レイエス
フィリピン商工会議所 環境・気候変動委員会共同議長
概要 フィリピン商工会議所(PCCI)のジーザス・G・レイエス氏による、フィリピンの環境課題解決ニーズに関する講演
具体的には、次のようなニーズが紹介された:

■水道・廃水および有害廃棄物におけるソリューション

■固形廃棄物およびプラスチック廃棄物における解決策

関連資料 JPRSI 2025年度第3回セミナーの記録
https://jprsi.go.jp/ja/static/activity-archive/2025/r7_seminar3_report
発表資料(日本語仮訳)
https://jprsi.go.jp/files/activity/r7_seminar3_report_04.pdf

フィリピン商工会議所(PCCI)について

 PCCIはフィリピン各地域の商工会議所、業界団体やビジネス協議会に属する中小企業を代表する、非営利・非政府の組織です。全国21地域にわたる、429の地域商工会議所、74の業界団体、65のビジネス協議会に属する、約3万5,000人の会員を擁しています。

 PCCIがフィリピンの元大統領から受け取った文書で、「PCCIはフィリピン民間企業の唯一の公式代表であり、声である」と述べられています。私たちのビジョンは、政府および国際機関の間でフィリピンのビジネスの声として認められることであり、その使命は会員および広範なビジネスコミュニティーに対して、ビジネス成長に向けた提言を行い、戦略的なサービスを推進することです。
2025年1月に行われた日本・フィリピン環境ウィークは約1000人のオンラインおよび現地参加者が集まり、PCCIも後援団体として参画しました。

フィリピンの現状

 フィリピンは低中所得の発展途上国で、インフラも未発達です。人口は1億900万人で、人口成長率は1.21%で、2045年には2億4200万人に達します。一方、残念ながら、貧困率は23.7%に達しています。熱帯低気圧帯および環太平洋火山帯に位置し、世界で3番目に脆弱な国です。

 2017年の世界リスク報告書によると、フィリピンでは年間約20回の熱帯低気圧または嵐が発生し、ほぼ毎日のように地震が起きています。

フィリピンにおける環境ニーズ

 フィリピンにはさまざまな環境関連法があります。環境影響評価書(EIS)システム、有害物質及び有害・核廃棄物管理法、フィリピン大気浄化法、生態学的廃棄物管理法、フィリピン水質浄化法、環境意識及び環境教育法、再生可能エネルギー法、気候変動法、エネルギー効率及び省エネルギー法、そして拡大生産者責任(EPR)法です。


 問題は、これらの法律が現在実施されているかどうかです。

 NDCでは、温室効果ガス排出量の75%の削減及び回避を見込むことを約束しています。非常に野心的です。75%のうち2.33%が条件なしであり、大部分の72.67%が条件付きです。これは、私たちの約束を果たすためには、他国の支援が必要であることを意味します。

 次に、セクターごとの貢献を示します。75%の削減目標がどのセクターから来るのか、イメージをつかむことができるでしょう。例えば産業分野では、クリンカー置換を最大の緩和策として検討しています。また、ガラスカレットの使用を増やしたり、冷蔵庫・エアコン内で地球温暖化への影響が少ない冷媒への移行を進めることも挙げられています。

部門別の貢献(発表資料 スライド8)

次に、フィリピンで必要と考えられているソリューションや技術を紹介します。気候変動対策として、冷媒の温室効果ガス排出量を減らすためには、地球温暖化への貢献が低い冷媒を使用した冷凍・空調システムの使用が可能になるよう、技術を見直す必要があります。さらに、メタン回収、車両の電化、持続可能な航空燃料の利用、エネルギー効率化や再生可能エネルギーに関する技術の拡充なども検討する必要があります。再生可能エネルギーは多くの国が現在利用しており、最近はエネルギー・アズ・サービス(EaaS)型のビジネスソリューションが世界的に増しています。

 このような気候変動側面では、現地設置型気象観測・早期警報システム、災害対応ソリューション・緊急時対応計画、そして洪水時の水処理、非常電源システム、可動型シェルター等といった、モジュール型ライフラインサービスが必要です。

環境ソリューション マトリクス(発表資料 スライド9)

水道・廃水および有害廃棄物におけるソリューションニーズ

フィリピンでは人口増加により、経済的な水ストレスに拍車がかかっています。地域社会での増大する需要に対応するには、地下水だけに大きく依存しないための投資が必要です。気候変動は、将来的に一部地域、特に小島嶼部で物理的な水ストレスが増幅されると見込まれています。また、高度都市地域での下水道システムの拡充にも取り組まなければなりません。なぜなら国内における下水道システムの割合が非常に低いからです。家庭由来の汚水の大部分が回収されておらず、部分的処理または未処理が現状です。

水処理および下水処理において必要な解決策は、水処理における「膜分離型システム」です。排出抑制を遵守すべき産業から排出される少量の廃水もあるため、コンパクトで低コスト、かつ実地に則した廃水処理システムが必要です。これらの産業には小規模な下水処理システムも求められます。自然を基盤とした廃水処理システム、バイオダイジェスター(バイオ消化槽)によるメタンの生成と回収が必要です。スラッジ(汚泥)やバイオソリッドの管理体制は十分ではなく、それらの処理も課題です。また、非塩素ベースの消毒やスマートな水供給ネットワークも必要です。

有害廃棄物の分野では、医療廃棄物の処理施設、例えば移動可能で小規模なユニットが依然として必要であり、国内のさまざまな島に設置できるものが望ましいです。有害廃棄物の回収施設も必要です。回収だけでなく、電気・電子廃棄物の処理や、使用済み石油をバイオディーゼルに変換する技術も必要です。

環境ソリューション マトリクス(発表資料 スライド11)

固形廃棄物およびプラスチック廃棄物における解決策のニーズ

 フィリピンでは1日に約6万1,000トンの固形廃棄物が発生しており、そのうち24%がプラスチック廃棄物です。プラスチックリサイクルができていないことにより、年間約7億9,000万~8億9,000万ドルの資源価値損失があると言われています。フィリピンはプラスチック汚染を排出する上位3カ国の1つです。

 フィリピンのプラスチック汚染対策の取組をご紹介したいと思います。拡大生産者責任法は2022年に成立し、企業がプラスチック包装廃棄物を効率的に管理し、環境に優しくない包装製品を削減し、廃棄物の環境への漏出を防ぐための回収プログラムを実施することを義務付けています。大企業は2023年末までにプラスチックフットプリントの20%を転換する必要があります。それは翌年には40%になり、2025年12月までに、企業はプラスチックの50%を転用しなければなりません。つまり法律を守るためには、使用または市場に排出しているプラスチックの50%相当を回収しなければならないということです。この推移は2028年まで続き、転用目標は非常に高い80%に達します。

都市固形廃棄物管理に必要なのは有機廃棄物の迅速な処理です。廃棄物の50%以上は有機物であり、この有機廃棄物を他の廃棄物と別々に迅速に処理できれば、他の廃棄物への汚染を避けられます。第二に、都市廃棄物の熱処理です。フィリピンは衛生埋立地に大きく依存していて、焼却炉の設置が課題となっています。なぜなら、フィリピンでは焼却処理が禁止されているからです。ただ完全な禁止ではなく、今後数年以内に自治体へ、廃棄物の焼却処理の導入が期待されています。「水熱液化」についても検討されています。フィリピンには多くの島があるため、プラスチック処理方法を厳密に分離する必要のない処理施設で、プラスチック廃棄物を一つの地域から別の地域へ運ぶのは非常に困難です。各島に分散した小規模かつ低コストのリサイクル施設が必要です。また、多層プラスチックを元の形に戻すための化学リサイクル施設も必要です。次に、消費者向け製品の包装に使える、より環境に優しい素材が必要です。拡大生産者責任法施行以降、企業がより環境に優しい代替品を採用する動きが進んでいます。

環境ソリューション マトリクス(発表資料 スライド16)

最後に

 最後に、大統領の発言を引用して締めくくります。

 「…我が国の環境並びに、気候変動による新たな常態に対する国のレジリエンス及び適応は、国家的課題の最優先事項です

 「…我々が講じる取組が、あらゆる活動において、より賢明で、より責任ある、より持続可能な社会へと我が国を導くことを確実なものとします」

発表者紹介

ジーザス・G・レイエス
フィリピン商工会議所(PCCI)
環境・気候変動委員会共同議長

豊富な実務経験を通じ、フィリピン資源循環・材料持続性連盟(PARMS)の創設メンバーとして活動し、2025年4月より同連盟の代表兼事務局長を務めている。フィリピン商工会議所(PCCI)では、2002年より環境・気候変動委員会の共同議長を務め、産業界における環境政策形成と推進に長年取り組んでいる。

  • 本資料はJPRSIが信頼に足ると判断した情報に基づいて作成されていますが、その正確性・確実性を保証するものではありません。
  • 本資料に従って決断した行為に起因する利害得失はその行為者自身に帰するもので、JPRSIは何らの責任を負うものではありません。
  • 本資料へのリンクは自由です。それ以外の方法で本資料の一部または全部を引用する場合は、出典として「JPRSI(環境インフラ海外展開プラットフォーム)ウェブサイト」と明示してください。

本記事は、JPRSI 2025年度第3回セミナーにおける、ジーザス・G・レイエス氏の講演を抜粋してまとめたものです。

世界各国の自然災害リスクを分析・評価し、ランキング化した年次報告書
参考:https://weltrisikobericht.de/worldriskreport/

Nationally Determined Contribution(国が決定する貢献)。パリ協定に基づき各国が5年毎に提出・更新する温室効果ガスの排出削減目標
参考:日本の新たな温室効果ガス削減目標(NDC)とGX推進政策について
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20250314-topic-69.html#:~:text=NDC%E3%81%A8%E3%81%AF,%E5%89%8A%E6%B8%9B%E7%9B%AE%E6%A8%99%E3%81%A8%E5%90%8C%E6%A7%98%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

参考:クリンカー置換技術の例
https://gec.jp/jcm/jp/projects/p_archive/13fs_mgl_02/

使用済ガラスびんや板ガラスを回収し、再利用しやすくした、ガラスの破片

電力を供給するだけでなく、保守や管理まで提供するサービス

家畜の排泄物等からメタンガスを発生させる簡易な装置
出典:https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2012_05